連合高知がホームページに掲載した「第31回定期大会(2019/11/27)における地域ユニオンからの闘争報告」記事の削除を命じた仮処分決定を不服とする異議申立ての決定が8月31日、出されました。
連合高知は、この決定を「社会通念と著しく乖離した、極めて不公平で中立性を欠く不当なものである」と受け止めています。したがって、連合高知は、社会からパワハラを根絶する立場から社会的な運動を背景に、組合員4名を原告団とする「パワハラ・嫌がらせ訴訟」とあわせてこの仮処分決定に関する争いも引き続き進めていきます。
そもそも地域ユニオンの闘争は、パワハラに苦しむ労働者の涙ながらの相談からはじまっています。この訴えに対して地域ユニオン‐連合高知は、これが紛れもない真実であると確信したからこそ組織をあげて闘っているところです。それを裁判所が「真実と信じるにつき相当な理由があるといえない」と判断した訳であります。この判断を受け入れるということは、今後の労働組合活動において、組合から闘争報告をはじめ何も発信できなくなり、その結果、相談者や組合員の支援もできないことにつながりかねません。
また、一般的に労働者は使用者に雇われている側であって、使用者と比べて社会的・経済的条件において不利で弱い立場にあります。そうであるがゆえに、労働者と使用者ができるだけ対等な関係になるように日本国憲法第28条において、労働三権が明記され、労働組合法などの法律でこれらの権利が具体的に保障されています。そうであるにもかかわらず、この仮処分異議申立事件における裁判所の決定は、労使関係において最も重要な降格処分問題に関する交渉に使用者側が誠実に応じてこなかったことや、降格処分の理由を変遷させたことが不当であるか否かの評価をまったく行いませんでした。労働組合としては、団体交渉に臨む使用者の対応は非常に重要ですし、重大な処分である「減給を伴う降格処分」の理由を変遷させることなどは、信義に反し許されないと考えます。ゆえに、この決定は、労働組合の表現の自由の侵害であると同時に、労働組合運動そのものを否定するものだと強く訴えます。
パワハラに関しては、本年6月からのハラスメント対策関連法の施行により、事業主のパワハラ防止措置が義務化若しくは努力義務化となりました。この法は不十分な点が多いものの、少なくとも「ハラスメントは、被害者に精神的・身体的苦痛を与え、人格や尊厳を侵害するのみならず、周囲の者に不快感を与え、就業環境全体を悪化させるものであり、なくしていくべき」という立場から制定されたものです。ところが、裁判所の決定は、組合員の一人がパワハラにあたるとして労働局に対して口頭助言申請を求めていた事実について、いずれもパワハラにあたらないと切り捨てました。これは、パワハラ防止法等でいう3要素6類型に当てはまらないものは一切パワハラと認められないといっているのに等しいと判断したものと受け止めざるを得ません。一般人がパワハラの認定を正確にすることなどできません。また、パワハラは多種多様であり、損害賠償請求の対象とまでは言い難い小さな嫌がらせのようなものから、一つの行為で損害賠償請求が可能となるような暴力的な言動のようなものまで様々です。違法なパワハラにあたるかどうかは別として、個々の労働者がパワハラと感じたことについて、使用者側に是正を求めること、それを労働組合が支援することは、まさに労働組合の使命であり、自由であります。違法なパワハラが許されないのはもちろんですが、全ての労働者が働きやすい就労環境を追求するのが私たち労働組合の使命です。私たちは、職場で嫌な思いをする労働者がいなくなるよう、広い意味でのパワハラ撲滅に取り組んでいるのです。ところが裁判所の決定は、違法なパワハラでなければ、組合員への支援の呼びかけ等の目的であっても、ホームページなどに掲載することは許されないという判断をしているのであって、こんなことは労働組合としてのみならず、一般人の立場からしても決して受け入れることなどできません。
私たちは、裁判所が弱者救済の視点をもち、一定の状況証拠の積み重ねでもパワハラの相当性を認めるよう求めていくことも課題だと判断しています。
この仮処分をめぐる争いの一方で、連合高知は、使用者から記事掲載について名誉毀損・損害賠償請求訴訟を起こされています。この訴訟では、パワハラ訴訟の原告団の一人である地域ユニオン組合員も「真実でないことを連合高知に伝え、使用者に損害を与えた」ということで被告として訴えられています。
この組合員は、いろいろ悩み逡巡しながらも泣き寝入りするのではなく、パワハラ・嫌がらせという社会的な理不尽を正していこうと決意し、闘いに立ちあがりました。このような労働者に対して使用者が訴訟を起こすことは、精神的苦痛を受け続けてきた被害者に追い打ちをかけるようなものです。被害を訴えた者を逆に訴えるというような暴挙が許されるのであれば、パワハラを糺そうとする行動に大きな制約を掛け、泣き寝入りを余儀なくさせることにつながりかねず、決して私たちは認める訳にはいきません。また、仮処分異議についての高知地裁の決定は、支援を求めた組合員が、会社にはパワハラや違法な降格処分もないのに、そのような事実があるかのように地域ユニオンに説明したと言っているに等しいものです。泣き寝入りせずに闘おうと決意した組合員を嘘つき呼ばわりし、会社のパワハラに悩んでいた組合員に追い打ちをかけるような決定を決して許すことはできません。
以上のように、本決定は「パワハラ・嫌がらせ行為の相当性」を認めないという、理不尽で極めて偏向したものであり、かつ、「表現の自由を含めた組合活動を黙示的に制約する内容」を孕んでいることなどから、高松高裁への保全抗告の申立てをしたうえで、組合員4名を原告団とするパワハラ裁判闘争を連合高知の大きな闘いと位置付けながら今後も取り組みを進めていきます。