地域ユニオン組合員4名のパワハラ訴訟判決に関する連合高知の見解

高松高裁は7月28日、地域ユニオン組合員4名に係る第128号損害賠償請求控訴事件(いわゆるパワハラ訴訟)について、判決を下した。
その内容は、高知地裁判決(2022/4/28)を大きく覆して、「1審被告代表者(高知さくら会計)及び幹部職員による次の各行為は、業務の適正な範囲を超えて、各1審原告(地域ユニオン組合員4名)らに対し、その職務上の優位性を背景に精神的苦痛を与え、又は職場環境を悪化させる言動を行ったものと評価できるものでパワハラに該当し、不法行為を構成するものといえる」とするものになっている。
これは、1審判決がパワハラ行為として提出した97項目を個々に切り分けて判断し、その内の「2件のみをパワハラと認定」するとしていたものを、高裁判決は、「一連の行為を関連付けるとともに、それぞれの行為に至る時間軸をも考慮したうえで、総合的に判断したもの」になっており、まさに、我々にとっては全面勝訴だといえる。

原告が提訴したパワハラ行為のうち、最大の案件であった「組合員T氏の降格処分の違法性」については、1審では「原告Tの過去の業務に対する評価及び平成31年4月2日の全体会における言動に対する評価を踏まえると、被告において、原告Tを班長から降格されることは、これにより役職手当月額約4万円の支給が受けられなくなることを考慮しても、被告の原告Tに対する人事評価に関する裁量の範囲内のものと認められる」としていた。
これに対して高松高裁は、「中間管理職的立場にある班長(T氏)が、制度の廃止(学校行事休暇)によって不利益を被る部下の立場に配慮し、部下に代わって使用者の提案に意見を述べることは、労働者の正当な権利主張であり、上記各言動をもって、1審原告Tが班長としての職務適正に欠けるとはいえない。・・・一班員に降格し、月額3万9200円の役職手当の支給を止めることは、1審原告Tが労働者として行った正当な権利主張・行使に対する報復的な業務命令として1審被告に許された裁量の範囲を超えるものであり・・違法なパワハラ行為に当たるものとして無効」と、1審判決を覆した。

また、労働委員会への個人あっせん申請(2019/5/28)直後の6月3日、「予告もなく突然席替えがなされ、T氏の班員がバラバラにされたうえに、T氏が孤立状態にされたこと」については、1審判決では「班組成や座席配置を決めることは、使用者の権限であるところ、被告代表者が行った対応が、明らかに業務上の必要性を欠くものであるとは評価できず、・・パワーハラスメントに該当しない。・・原告らが主張するような原告Tを孤立させる意図があることを認めるに足りる適切な証拠はないから、原告らの主張は採用しない」となっていた。
これについても高松高裁は、まず、「班組成や座席配置を決めることは、使用者の権限である。しかし、この段階で、1審被告は本件降格処分、団体交渉拒否をおこない、組合嫌悪の姿勢を明らかにしていた。・・・5月28日に労働委員会にあっせん申請をしてから1週間後に行われ、・・」と時系列に沿ってそれぞれの行為を関連付けた。そのうえで、「しかも、班員の仕事はそのままに班構成を変え、T班を解体して班員全員を1審原告Tから切り離すというものである。これは・・人間関係からの切り離しを図ろうとする措置と評価せざるを得ず、1審原告Tに対する違法なパワハラに該当する」と適切に評価している。

それぞれの行為の裏付けとなる「第三者の証言および陳述書」に関しては、1審においてまったく証拠・証言として取り上げていなかったが、高松高裁は、「1審原告らと一線を画する態度を取って・・中立的な証人であり・・○○に関する部分は信用性が高く、採用することができる」とした。
これは、1審尋問(2021/8/23~24)の際、証言者が勇気を振り絞って“職場で見聞き、体験したことを客観的に述べた”ことを裁判所が無視しなかったということであり、連合高知としても証言をお願いしてきた立場から、本人の努力に報えたと受け止めている。

以上、高裁判決に関してポイントとなる部分について概観したが、何よりもこの高裁判決について連合高知は、「パワハラ・嫌がらせは社会的悪だということを社会発信したもの」として評価する。そのうえで、「社会全体がこの判決をもとに、何がパワハラ・嫌がらせになるのかの事例としてもらうこと」を切に願うところである。
同時に、私たち労働組合は、「人権を守る社会的秩序とあらゆるハラスメントを絶対悪とする道徳の普遍化」に向けて職場生産点から不断に活動していかなければならないと考えている。
そのためにも、「誰もがあらゆるハラスメントの被害者にならず、加害者にもならず、そして何よりも、傍観者にならないこと」をお互いに確認し合いながら、引き続き社会的労働運動を進めていくことを決意している。