最高裁の「高松高等裁判所令和5年(ネ)第137号(令和5年10月24日判決)」に関する決定について(見解)

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1.最高裁判所第一小法廷は6月6日、「高松高等裁判所令和5年(ネ)第137号(令和5年10月24日判決)」の上告について、「棄却」決定した。この上告は、連合高知が「ⅰ.正当な組合活動における表現の自由を制約するものであり、“正当な組合活動の違法性阻却”という判例法理からしても逸脱している、ⅱ.高裁判決は、すべての労働組合にとって、今後の活動に多大な影響を及ぼす内容である」と判断したことから行ったものである。
 だが、最高裁はこれを「本件上告理由は、違憲および理由の不備をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない(民訴法312条1項又は2項所定の場合)。」とした。これにより、高松高裁の「労働組合による表現行為であることを理由に当該表現行為の違法性が阻却される場合があると解することはできない」旨の判決が確定した。
2.これについて連合高知は、私たちの主張である「正当な組合活動として社会通念上許容される範囲内にとどまることから、違法性は阻却されるべきだ」との主張が、最高裁において“一顧だにされなかった”と受け止め、組織をあげて遺憾の意を表明する。
3.そもそも本件の問題表現は、保全抗告決定(2021.3.30高松高裁)がいうように、“煽情的、侮蔑的表現ではない”うえに、“問題表現は否定的な意味合いの強い表現以上でも以下でもない”ものである。ましてや、問題表現は一般社会においては“就業環境が悪い企業を非難する際に使用される通常の用語になっている”ことから、「損害賠償の対象になるような用語ではない」と考える。加えていうと、別件「パワハラ訴訟(控訴128号事件/2024.1.26 最高裁第二小法廷不受理)」では、被告会社において29項目にも及ぶ「パワハラ・嫌がらせ行為があった」と認定されており、問題表現を使って批判されてやむを得ない状況にあったにも関わらずである。
4.だが、裁判上は、この最高裁棄却によって訴訟手続きのすべてを終えたことになる。よって、連合高知は、良かれ悪しかれこれを厳粛に受け止める。
5.一方、この決定によって連合高知がこれまで行ってきた運動が変わるものではない。社会では多くの労働者が「パワハラ・嫌がらせ」に苦しんでいる。そのことからすると、むしろ私たちの社会的役割は増しているといえる。
 これまでの一連の訴訟(パワハラ訴訟・損害賠償請求訴訟)では、地域ユニオン組合員4人の人権を回復するとともに、その生活を私たちは少なからず守った。併せて、社会的にパワハラ・嫌がらせの“問題性”も明らかにしてきた。こうした運動こそが社会的労働運動そのものであり、連合高知における運動の到達点であると確信している。
6.この地平に立ちながら私たちは、今後も「人権を守る社会的秩序とあらゆるハラスメントを絶対悪とする道徳の普遍化」に向けて、不断に社会的労働運動を続けていかなければならないと改めてここに決意する。
 そのうえで、「誰もがあらゆるハラスメントの被害者にならず、加害者にもならず、そして何よりも、傍観者にならないこと」をお互いに確認し合いながら、引き続き連合高知の運動を進めていこう。