連合高知HP記事に関する損賠訴訟 高裁判決について

連合高知ホームページ掲載記事に関する「高松高裁控訴審判決」が10月24日、下された。この判決内容をみると、高知さくら会計におけるT氏降格処分の不当性や、複数のパワハラ行為があったことは認めながらも、記事の一部の表現は、意見・論評としての域を逸脱しており、高知さくら会計への名誉毀損だと判断された。
この判決について連合高知は、「高裁は、高知さくら会計における不法行為の存在を認めながらも、それを“社会的に糺す運動を念頭に置いた呼びかけの記事”を否定した。これは、パワハラ・嫌がらせ行為が労働者に及ぼす影響を高裁が軽視しているといわざるを得ず、さらには、正当な組合活動とそれに含まれる“表現の自由”を司法が制約したことと同じだ」と受け止める。
まず、2021年3月30日に出された「保全抗告決定(高松高裁)」を振り返ってみると、投稿記事の表現について、『いずれも真実であるとまでは認められないけれども、“真実であると信じるにつき相当な理由があった”と認められ、殊更に虚偽の主張がされているものではない。そして、その表現をみると、一部に否定的な意味合いの強い表現を用いているものも見受けられるが、“全体としては労使間紛争の事実経過を報告する内容”となっており、煽情的、侮蔑的な表現を用いるものではないし、本件投稿記事の目的が地域ユニオンを支援すること等にあることは明らかであって、組合活動の一環としてされたものである上、抗告人の広報媒体である本件ホームページ等に本件投稿記事を掲載したものであって、“その態様も穏当である”。これらの事情を総合考慮すれば、広く一般に公開されるというインターネットにおける表現活動の性質を踏まえてもなお、正当な組合活動として社会通念上許容される範囲内にとどまると認めるのが相当である』としていた。
だが、控訴判決は、投稿記事が「正当な組合活動として違法性が阻却されるのかどうか」について、「表現行為の事実の公共性、目的の公益性、事実の真実ないし真実相当性の有無、意見・論評の相当性を検討して行われるべきであり、これらの検討を経て表現行為が違法性を阻却するとはいえない場合に、更に労働組合による表現行為であることを理由に当該表現行為の違法性が阻却される場合があると解することはできない」としたうえで、私たちが主張する「正当な組合活動として社会通念上許容された範囲の表現であり、違法性が阻却されるべき」との主張を退けた。
これは、上記の仮処分保全抗告の決定を根本的に覆す内容としか言いようがなく、連合高知としては理解しがたい。
しかも高裁は、高知さくら会計が「基本的に法令順守の姿勢を有している」こと、また、労使紛争前には「パワハラが横行していた事実はうかがえない」こと、「法令違反に相当する行為があっても、それが恒常的ではなく、また、法令順守の姿勢にある企業は(連合高知が表現したような)企業ではない」という理屈を持ち出して、HP記事を「正当な組合活動」とはいえないとした。
この評価・判断はあまりにも“論理の飛躍”であり、労働組合である連合高知としては到底、受け入れられない。ましてや、仮処分の保全抗告決定では「否定的な意味合いの強い表現もあるが、煽情的、侮蔑的な表現を用いるものではないし、その態様も穏当である」との評価であったことからしても、この判決内容は保全抗告決定と整合性が取れないばかりか、あまりにもかけ離れており、連合高知としては納得できるものではない。
したがって、連合高知は、この判決について、① 正当な組合活動における表現の自由を制約するものであり、“正当な組合活動の違法性阻却”という判例法理からしても逸脱していること、② この判決は、すべての労働組合にとって、今後の活動に多大な影響を及ぼす内容であることから、最高裁に上告することにした。